2015年12月16日水曜日

ベンチャー社長とNo2は「夢」と「現実」で役割分担

先週「ベンチャーNo2サミット」というものがエウレカ社主催で開催されました。
http://peatix.com/event/127119

メルカリの小泉さん、エウレカの西川さん、
サイバーエージェントグループからCAリワードの児玉さん、
サイバーエージェント・クラウドファンディングの坊垣さんが登壇者で、私がモデレーターをやらせていただきました。

来場者約100名のうち、社長が2割、No2が7割、という、普段とは違った参加者層で、金曜の夜、3時間半、お酒を飲みながら、ベンチャーNo2について語り明かしました。
登壇者の協力で、ここでは書けない赤裸々な話も明かされ、大いに盛り上がったと思います。
ベンチャー社長のイベントは多数あれど、No2にフォーカスしたイベントはなく、横のつながり、知見の共有等の観点で今後も継続して開催することを考えていきたいと思っています。

ではまず、セッションの最初にQ&Aをやってみたので、それを共有させてもらいます。
今回の結果が凝縮されていると言えるかもしれません。
















さて、この会を通して、以下の3点が改めて確認できました。
当たり前のことすぎるような気もしつつ、[1][2]は意外と出来ていないケースも多いのではないでしょうか?

[1]ベンチャー社長とNo2はしっかり役割分担をはっきりすべし
[2]ベンチャー社長とNo2はコミュニケーションの質と量をしっかり取るべし 
[3]ベンチャーNo2に向く素養について

[1]についてですが、経営チームが役割分担が大事なのと同様、イケてるベンチャー社長とNo2は、
しっかり役割分担ができているということが確認できました。

表現は違うものの、分担の仕方としては、ベンチャー社長は「夢」を描くことが仕事であり、No2はそれを「現実」にすることが仕事、というのが共通理解でした。

社長の、今の身の丈からは考えられないようなとんでもない夢を、馬鹿にせず、リスペクトし
昨日言ったことと今日言うことがまったく違う社長の朝令暮改の発言も、それを咎めず、しなやかに受け止め、しっかりと現実に落としていくことがNo2の仕事と、登壇されたNo2のみなさんが覚悟を持ってNo2の仕事に向き合ってらっしゃることが伝わってきました。

また、「プロダクトは社長」「それ以外はNo2」等、そもそも役割分担が実現できる、スキル/キャラクターが補完関係にある人どうしがチームを組むべき、ということも登壇されたNo2の方々の一部の方は強く意識されていることがわかりました。

[2]についてですが、ベンチャーによっては、役割分担がきっちりできていないケース、決めた役割分担が、うまく機能していないケースが時々あります。

そのようなケースは、そもそも補完関係にない人どうしがチームになってしまったケース、そして、
コミュニケーションの量と質がしっかり担保されていないケース、がありそうです。

後者についてですが、登壇したNo2はほぼ、社長と週に10時間以上コミュニケーションをしていました。外出が多くとも、Slack等を使えば問題ない、と、意識的にコミュニケーションの機会を作っているとのことでした。
また、そもそも登壇したNo2は、「社長とNo2」という関係になる以前に、社長とは長い間友人関係であったり、上司と部下だったりで、関係性を構築してきていました。
たまにかなりの大喧嘩もするような話も出ていましたが、みなさんコミュニケーションの質量ともに、担保されていることがうかがえました。

改めて、ベンチャーNo2の皆さんはコミュニケーションの量、質、ともに担保されているか確認してみるとよいのではないかと思います。

社長と何時間話せているでしょうか?喧嘩するくらい体当たりのコミュニケーションができているでしょうか?
(そもそも、No2を引き受けるときに、社長との相性、よい関係性を構築できそうかを確認することは大事だと思います)

私も小さな会社をやっていたことがありますが、かなり忙しい環境下で、コミュニケーションを怠っていたなと振り返ることがあります。自身の経験も踏まえ、事業を作る努力の前に、チームを作る努力ができているか確認してみることをお勧めしたいなと、改めて思いました。

ちなみに、補足ですが、登壇No2のみなさんは社長とのコミュニケーションとともに、No3以下のみなさんとのコミュニケーションにも非常に注意を払っていました。
実務責任者としての迅速なコミュニケーション、組織全体を見たときに、自分が演ずるべきコミュニケーション(時には社長の代わりに怒ったり、No3以下をうまく引きあげられるように配慮をしたり)等、イケてるNo2のコミュニケーション術は、会場に来ていた約80人のNo2の皆さんにとても参考になったのではと思います。(ナマナマしいもの多数で、ここでは割愛させていただきます笑)

[3]についてですが、実ははっきりと答えが出たわけではありません。

今回確認できたのは、ベンチャーNo2にも2種類あり、「もともとNo2気質で、なるべくしてNo2になった」パターン、「もともとはNo1気質であったが、No2に転向した」パターンというのがある、ということです。
今回登壇者のアンケートでは、小泉さんのみが後者、その他の方は後者のパターンと推定できます。小泉さんは大学時代、240人いるサークルの代表もやっていたということで、大学時代まではNo1気質だったようです。ただ、大学卒業後、大和証券で上場支援をやっていた際に優秀なNo2と仕事をする機会が多数あったこと、mixi社での経験を経て、No2のスキル・素養を身につけていったというような話と理解しました。結果、とてつもなく攻めのNo2ができあがったように見えます。

もともとNo2気質だったというみなさんも、No2気質という程度にも差がありそうですし、そうなった過程も様々のように見受けました。

「素晴らしい社長は(意図的に)作れるのか?」という議論と同じように、「素晴らしいNo2というのは(意図的に)作れるのか?」というのはとても深い議論だなと思いました。

素晴らしいNo2は、どの程度そもそもの素養で作られており、どの程度鍛錬によってできあがっているのか、どういう鍛錬が一番効いているのか等、気になります。また、素晴らしいNo2というのは各社社長との関係性や、会社のフェーズにもよって変わってきそうで、単一のものではなさそうです。ベンチャーを支援する立場として、今後、探求を進めていきたいなと思っています

今回を始まりとして、ベンチャー企業をうまくいかせるための、No2をはじめとする人的な知見の蓄積、よりうまくいくベンチャーのチーム作りについて、考えを深めていきたいなと考えています。

#「No2サミット第二回」、やりたいね~と話しているので、こんな人に登壇してほしい、こんなテーマで話してほしい、協力したい(スポンサー等)等ありましたらメッセージいただければ!






2015年1月8日木曜日

大企業×ベンチャーの事業連携をうまくいかせるために必ずやっておきたいこと

昨今、大企業とベンチャー企業の連携が加速度的に増えてきて、
大企業とベンチャー企業で「事業提携」を結ぶケースも増えてきた。夢が広がると大変期待を持っている。一方でなかなか「事業提携」がうまく進まないという話もちらほら。
「事業提携」はどうしたらうまくいくか、私なりのTIPSを整理してみた。

事業側として、投資家側として色々な事例を見てきたけれども、ポイントは、「ユメ」「ヒト」「シクミ」の3つではないかと思っている。基本的なことばかりのような気がするが、意外と抜け漏れあるのではないかと思う。以下ご参考になれば。
*書きやすさ上、ややベンチャー側からの視点が多くなり恐縮です。

【ユメ】ストーリーと数字/事業計画の共有

この提携を通じて、どういう未来、ビジネスを実現したいのか。
大企業側、ベンチャー側、各々の目指す道とズレはないか。むしろ、各々の道を発展・拡大させる提携になるかどうか。
ここに乖離があるようだとなかなか提携は進まない。お酒を酌み交わすなんてことも交えながら、できればじっくり時間をかけて話をしたい。
                                            
上記、合意が取れれば、次はそのユメを数字に落とす。「事業計画」を作るのだ。
                         
これでより提携のリアルが増す。「お互いこういうふうに頑張らないと、この数字いかないよね」の「こういうふうに」をより具体化できておくとよいと思う。「不可能ではないが、頑張らないといかない数字」を数字をもって、でっかい夢を描きたい。意外と事業計画が作られない、ノリの提携事業は多い気がしている。たいていそういうのはうまくいかない。

【ヒト】この人とやりたいか

どんな仕事もそうだと思うが、「この人とやりたいかどうか」はとても重要だ。

特に提携事業というのは、思ったようにうまくいかない場合、双方の会社の論理で、簡単に解消に傾くケースが多い。うまくいかないときに「何が何でもやり遂げるんだ」と粘るところで、「この人とやっているんだから成功しないわけがない」というようなことが結構効いてくる。
担当同志がユメを共有するところでそういう間柄になっているかどうかは、成功確率に関係していると思っている。大企業と提携する場合、ベンチャー側は、担当者以外にも、その上の意思決定者(社長、役員、部長)とユメの共有はもちろん、「この人とやりたい!」と思えるような関係を持てているかは大事だと思う。大企業はある程度、各階層ごとに意思決定の裁量がある。担当の意思決定の範囲を超えると、その意思決定は部長、役員、社長へと委ねられる。彼らと関係を築けていると安心である。関係を築く際に、ベタだがお酒を酌み交わす、ということもあるだろう。
しかし大企業の役員クラスになると、飲みにお誘いしても、数か月先なんてこともまったくもって普通だ。余裕をもって計画したい。

*余談だが、提携事業で成功体験を持つ人は世の中にそんなに多くないんじゃないかと思っている。大企業とベンチャーでの提携事業ならなおさらだ。
日本にはベンチャーと提携事業を多く進めている大企業が数社ある。彼らは成功体験を持っていらっしゃる方が担当についていただけるので、どこが勘所か熟知されていて、成功確率が高いのだと思う。担当が提携事業の成功体験を持っている人だと成功確率は高まる。

【シクミ】進捗チェック/改善のための会議を設計する

事業が開始されたら、各種会議体を設けて、事業がうまくいっているのか、いないのかを定期的にチェックし、改善していきたい。週次でチェックすべきこと、月次でチェックすべきこと、年次でチェックすべきこと、と分け、それぞれ話すべき相手の都合を考えてスケジューリングしたい。たとえば以下のような感じで。

■週次:担当者どうしで細かい進捗チェック、改善等
■月次:部長・役員レベルで大枠の進捗チェック、改善等
■四半期/半年/年次:役員・社長等と今後の提携事業の方向性についての検討等

意識するのはベンチャー企業と大企業の意思決定の仕組みの差異である。
前述のとおり、大企業は各階層ごとに、決定できる範囲は決まっている。また、ベンチャーでは1日で決まることが、大企業では多少時間がかかってしまう場合が多い。(関係者が多いので一定仕方がないことだと思う)よって、定期的に意思決定者とMTGする機会を設けて、そこを意思決定のする場にする、というやり方はお互い合理的ではないかと思う。
また、大企業の場合、担当が変わってしまうことも多い。コミュニケーションを仕組化することで、その移行リスクも回避できる。

一方で、あまり大企業側の仕組みに適合しすぎるのも良くない、という話を大企業側のご担当の方から聞く。彼らは社内では出せない、ベンチャーのスピード感、ダイナミックな動きに期待して、アライアンスを組む、ということも多いとおっしゃる。
時には、信頼関係がある上で、大企業の論理と対峙する(たまには喧嘩する?)ことも意識したい。

以上、「ユメ」「ヒト」「シクミ」で整理をしてみた。

さて、ここまで3つの切り口で整理してきたが、やっぱりベースは人だと思う。私が知っている、成功した事業提携は、思いのある人たち、チームが形作っていた。死ぬ気でやっていた。中途半端な事業提携なんて成立しない。事業提携は山あり谷あり。うまく行かないときも、踏ん張れるか。事業提携成功の裏には必ず影の立役者がいる。

ご参考いただき、大企業×ベンチャーの提携事業がでっかく進むと嬉しい限りである。

*「事業提携」と一緒に最近は「資本業務提携」として資本を絡めるケースも多い。できれば、業務提携が先に進んでいると、資本提携もお互い結びやすいはずだと思っている。